富田メモ公表で妻「昭和天皇のお人柄伝えたかった」「靖国を論ずるのはやめて」(産経)
昭和天皇が靖国神社のA級戦犯の合祀に強い不快感を示されたとされるメモを富田朝彦元宮内庁長官(故人)が書き残していた問題で、富田元長官の妻(81)は産経新聞の取材に応じ、「こんなに大騒ぎになるとは思わなかった。日記やメモを公表したのは、昭和天皇のお人柄を伝えたかったから」と語った。
妻によると、メモや日記は元長官が平成15年11月に亡くなった後、東京都内の自宅寝室の奥に残されていた。
「読んだらとてもおもしろく、まるで富田が生きているみたいで…」
元長官は生前、日記やメモの扱いについて何も言い残していなかった。だが、彼女自身は「いずれ発表できる機会があればいいと考えていた」という。
(中略)
一方、メモには、昭和天皇が靖国神社に合祀されたA級戦犯の松岡洋右元外相らについて具体的な人物批評をされていたことが残されていたが、この点についても「陛下がお亡くなりになる前から、何度もそのようなお話を(元長官に)されていたようです」と話した。
また、一部で「元長官は日記やメモの公表を望んでいなかったのではないか」と指摘されていることについて、「喜んでないことはないと思います。一冊も本を出さなかった人ですから、一つくらいは出してもいいのかなと思います」。ただ、反響の大きさは予想外だったという。
「こんな大騒ぎになるとは思わなかった。メモや日記をとらえて靖国を論ずるのはやめてほしい」
その上で、靖国問題に対する自分の考えとして「国民一人一人が知識を持つべきだと思う。政治家、学者、遺族…。国民みんなで考え、何回も討論し、結論が出せれば」と語った。
こうして富田夫人の言い分を聞いてみると、改めて軽率だったなと思う。昭和天皇のお人柄をみんなに教えたかったという動機は健全だけど、結局のところはお人柄どころか、メモの一部分だけを切り取って政治利用されることになってしまった。いや、政治利用というのは掲載後の話で、掲載した日経の目的は自社社員のインサイダー疑惑から目をそらすためだったとも言われている。そんなことのために昭和天皇が利用され、陛下の名誉や威厳を著しく損なうだけとなったことは非常に残念である。
富田さんも富田さんだ。死んだ人のことを悪く言いたくはないが、メモの処分をきちんと伝えていなかったとはどういうことか。以前読んだどこかの記事では、富田さんは生前「あのメモは墓場まで持っていく。自分が死んだら一緒に焼いてもらう」と話していたと書いてあった。富田さんはそのつもりだったのだろうが、そんなことはちゃんと言い残しておかなければ意味がない。死んだあとで、自ら身辺整理ができるわけはないのだから。
身内に任せられないのなら、生きているうちにしっかりとけじめを付けておくべきだったろう。そこをきちんとしていなかったとなると、富田さんは閣僚として失格だったと言わざるを得ない。守秘義務を遵守することは、公人の基本中の基本である。まして、陛下の私的発言なんてものならなおさらだ。
富田メモが本物か偽物かはもはやどうでもいい。でもひとつだけ言えることは、決して世の中に出てはいけなかったものだったということである。この先、何人たりとも陛下のお言葉を政治利用することがないように、今回のようなことは二度と起こらないようにしてほしい。私としても、戒めとしたいものである。