ホテル使用拒否 司法をないがしろにする行為だ(2月3日付・読売社説)
司法の判断に従わなくとも構わないという理屈がまかり通れば、社会が成り立たない。
日本教職員組合の教育研究全国集会(教研集会)が都内で始まったが、全体集会が中止になった。会場になるはずだったホテルが「日教組の予約は解約した」と主張し、使用を拒んだからだ。
東京地裁、東京高裁は、「解約は無効で、使用させなければならない」と命じたが、ホテルはこれに従わなかった。
日教組が毎年1回開く教研集会には、2000〜3000人が参加する。1951年から57回に及ぶ教研集会で、全体集会の中止は初めてだ。
裁判所が認定した事実によると、日教組は昨年3月、グランドプリンスホテル新高輪に会場の使用を申し込んだ。その際、例年、教研集会の会場周辺では右翼団体の街宣活動があり、警察に警備を要請していることも伝えた。契約後、日教組は会場費の半額を支払った。
ところが、11月になってホテル側が突然、解約を伝えた。
ホテルが契約後、過去の例を独自に調べた結果、100台を超す街宣車の拡声機による騒音や大規模警備で、他の利用者や住民に多大な迷惑をかけることが分かったため、というのが理由だ。
だが、ホテルが右翼団体による妨害を恐れ、筋の通らない理屈で解約を正当化してまで集会を中止させれば、右翼団体の思うつぼである。
裁判所が指摘したように、ホテルは日教組や警察と十分打ち合わせ、混乱を防ぐ努力をすべきだったのではないか。
ホテルが今回、恐れたのは右翼だったが、左翼側の“威圧”で講演会の主催者が講演を中止した例も少なくない。
1992年に、評論家の上坂冬子さんが月刊誌で憲法改正に言及したとする社会党(当時)などの抗議で、新潟市主催の憲法記念集会での講演が中止となった。97年には、ジャーナリストの櫻井よしこさんも、「従軍慰安婦」問題での発言を巡り、「人権」を掲げる団体の抗議で主催団体が講演を取りやめた。
異なる立場の意見でも、発言する自由を最大限認めるのが、民主主義社会である。憲法で保障された「集会の自由」「表現の自由」が脅かされてはならない。
ホテル側は、「極めて短時間で十分な審理、理解を得られないままなされたもので、大変残念」としている。
だが、ホテル側は裁判の係争中なのに、会場には既に別の客の予約を入れていた。司法をないがしろにする行為は許されまい。一流ホテルには、それにふさわしい社会的責任が求められる。
日教組の全体集会中止については、昨日の朝日・毎日・東京もそれぞれ社説を載せてましたが、今日の読売の社説がいちばんよく書けていると思いましたね。
他の社説はほぼ、被害者はいつも左で、加害者はいつも右という図式で書かれていましたが、読売は左が右を威圧した前例をきちんと示して公平性を保っています。左の人は「我々は右翼団体とは違う。あくまで市民として抗議したまでだ」と言うでしょうが、本質は同じだと思います。ま、集会の自由が認められているのと同様に、それに抗議することもまた権利のひとつなので、私は別に抗議すること自体を批判はしませんが。
私は、ホテル側の言い分も理解はできるんですよ。新高輪プリンスの周辺には高輪プリンスや品川プリンス、ホテルパシフィック東京、高輪京急ホテル、高輪東武ホテルなどのホテルが密集してますし、周辺道路に街宣右翼が集結すると自ホテルのみならず周辺のホテルにまで騒音被害を与えることになります。また、周辺道路は決して幅員が広いとは言えず、万が一警察によって封鎖されたりすれば、他の宿泊客がホテルに来られなくなったり、ホテルから出られなくなったりする事態も考えられました。ホテルとしてはそういう危機感が拭いきれないから、裁判所の仮処分が出ても断固として受け入れなかったのではないかと思います。
集会の中止を受け、右翼団体の反応も様々なようです。中には「日教組のような団体に会場を貸すこと自体がけしからんということを世に知らしめることができてよかった」という意見もありましたが、一方で「こういう場でないと我々の声は日教組に届かないので、中止になると困る」という意見もありました。街宣右翼は嫌いですが、言論と言論の戦いという点で見れば、後者の意見にならある程度共感できるものがあります。とは言え、街宣右翼のやり方は決して話し合いをするような態度じゃないのが実情ですけどね。
ま、今回の問題を私なりに総括しますと、民間企業に日教組集会の会場を頼んだのがそもそもの間違いだったでしょう。今回は日本武道館や東京体育館などの公的施設が押さえられなかったので、やむを得ず新高輪プリンスと契約したとのことですが、日程は早くから分かっているのだからあらかじめ会場を確保しておくべきでした。公的施設なら、仮に拒否されても前例から言って開催はできたでしょうからね。そういった運営上の不手際が、全て棚に上げられているような気がしないでもありません。
きっと喜んで貸してくれるでしょう( ̄ー ̄)
信濃毎日新聞の社説には『集会拒否 憲法の精神に反する』と表して書いています。
中に「企業も社会の一員である。法治国家の下、ルールを守らなければならないのは当然のことだ。イメージダウンは避けられない。」とあります、
しかし、この件についてはイメージダウンどころかイメージアップに思えたのは僕だけじゃないと思いますが・・・
私も、最初はそれをオチにしようと思ったんですよ。
だけど、浜離宮朝日ホールの収容人数を調べたら、700人ちょっとしかないんですね。
有楽町朝日ホールも同じくらいなんで、二つ合わせても今回の参加予定人数だった2000人には足りないんです。
もちろん、あちらさんのことだから参加者数を水増ししてる可能性はあるんですが、いちおうそこをツッコまれると痛いんで書くのをやめときました(笑)
まぁあれですよね。何だか全体集会なんてものは、わざと右翼に妨害されることで自分たちが被弾圧者であることをアピールするための手段に思えます。
妨害されるのが嫌だったら、分科会の会場をオンラインで結ぶなり何なりしてやればいいと思うんですよ。そうすりゃ、右翼も分散するから実害は軽微になりますしね。
日教組の中の人の反応も様々で、中には「もともと全体集会には出ないつもりだった。あれはただのイベントだから」という意見もありました。
研修のために必要なのは分科会であって、気勢を上げるためだけの全体集会ならいらないですよねぇ。
>佐倉さま
朝日にとって国旗国歌法はたぶん法律じゃないんで、そこは守る気なんかさらさらないでしょうね。
現に、法律に明文化されていることよりも小渕元首相の「強制することはない」という答弁のほうを重視しちゃってますから。
>monoさま
要は、宿泊しているお客様と、集会のお客様のどちらに重きを置くかということですからね。
ホテルの本業は宿泊業ですし、宿泊の客が迷惑を被る事態をできるだけ回避するのもホテルの努めだと思います。
宿泊客の立場からしてみると、これはイメージアップにつながるのかもしれませんね。
日教組の人たちは、せっかく新高輪プリンスのような高級ホテルで集会を開くならば、いっそのこと参加者全員がホテルに宿泊すればよかったんですよ。
そうすりゃ、近隣の人々はともかくとしてもホテルの宿泊客に迷惑はかかりません。ホテルの待遇も違ったんじゃないかなと思ったりもします。