沖縄ノート訴訟、集団自決「軍深く関与」…大阪地裁(読売)
◆大江さん側勝訴
沖縄戦で住民に集団自決を命じたと著書で虚偽の記述をされ、名誉を傷つけられたとして、旧日本軍の元少佐らが作家の大江健三郎さん(73)と岩波書店(東京)に出版差し止めと2000万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が28日、大阪地裁であった。深見敏正裁判長は「集団自決には旧日本軍が深くかかわった。元少佐らの関与も推認できる」と指摘。「元少佐らが自決を命じたという記述が真実と直ちに断定できないが、記述には合理的な根拠があり、真実と信じる相当な理由があった」として名誉棄損の成立を否定、原告の請求をすべて棄却した。原告側は控訴する。
訴えていたのは、座間味島の守備隊長だった元少佐・梅沢裕さん(91)と、渡嘉敷島の守備隊長だった元大尉・赤松嘉次さん(故人)の弟秀一さん(75)。
問題とされた著作は、岩波新書の大江さんの随想記「沖縄ノート」(1970年出版、約30万部発行)と、故家永三郎氏の歴史研究書「太平洋戦争」(68年出版、約18万部発行)。沖縄ノートは他の文献を引用する形で集団自決を「日本人の軍隊の命令」とし、梅沢さんと赤松さんの名前を伏せ、「事件の責任者はいまなお、沖縄にむけてなにひとつあがなっていない」などと記述した。太平洋戦争は梅沢さんの実名を出し、「自決せよと命令した」と記した。
深見裁判長はまず旧日本軍の関与について検討。▽軍から、自決用の手榴(しゅりゅう)弾を受け取ったとする住民らの証言が多数ある▽沖縄で集団自決が発生したすべての場所に軍が駐屯し、軍のいない島では自決がなかった――などから「軍が深くかかわった」と認定。梅沢さんと赤松さんについても、「島では原告らを頂点とした上意下達の組織が築かれ、関与は推認できる」と指摘した。
しかし、原告らが命令を出したかについては、命令の伝達経路などがはっきりしないため、「命令したと認定するには躊躇を覚える」と断定を避けた。
そのうえで、「記述は原告らの社会的評価を低下させるが、集団自決に関する学説の状況、文献の存在などを踏まえると、真実と信じる相当の理由があった」と結論づけた。
原告側は「原告らによる自決命令は住民の遺族が戦後に補償を受けるため捏造された虚構」と主張したが、深見裁判長は「捏造は認められない」と述べた。
この訴訟は、2006年度の教科書検定で「軍による強制」の記述に意見がつく理由の一つとなり、判決が注目されていた。
(以下略)
◆判決骨子
▽集団自決には日本軍が深くかかわったと認められ、元少佐らの関与が推認できる。
▽元少佐らが自決命令を発したことを直ちに真実であると断定できないとしても、記載内容を真実と信じる相当の理由があった。
▽沖縄ノートの記述は、意見・論評の域を逸脱したものとは認められない。
この判決、百人斬り訴訟における「明確に虚偽とは言えないから、真実なんじゃね?」というトンデモ判決と構造が全く同じですね。これは刑事訴訟ではないにしても、「疑わしきは罰せず」が司法の基本理念のはず。なのに、「原告がやったかどうかは分からないけど、やったと言っている人もいるからやったんじゃね?」では話になりません。地裁の裁判官は真実を見極める眼(まなこ)が完全に濁っていたようです。次(控訴審)行ってみよう。
集団自決において、私ら軍命否定派が最も重要視しているのは、軍命があったか、なかったかなのです。なのにこの判決はその有無を判断することはなく、「関与」はあったなどというお決まりの文句でお茶を濁しました。そもそも「関与」という言葉は命令があったと断定しにくくなったサヨクが苦し紛れに言い出した曖昧極まるものだし、戦争をやっているんだから何らかの形で軍が「関与」しているのは当たり前です。そんなのは言われなくても分かっているので、命令の有無まで踏み込まなかった今回の判決は完全なる無意味と断じてもいいでしょう。
司法がそこまで踏み込まなかったことで、原告の言い分がある程度認められたという見方もあります。だけど私はそれでは不満ですね。何の証拠もないのに、被害者の証言だけで有罪が決まる痴漢冤罪と同じ構図だからです。しかも、赤松・梅沢両氏により近いところにいて、はっきりと「死んではならない」という言葉を聞いている人の証言が完全に無視されています。直接聞いた人の証言が軽んじられ、伝聞に過ぎない人の証言が重んじられる裁判とは何なのでしょうか。
控訴審では、是非とも宮平秀幸氏に証人として出廷して頂きたいですね(宮平氏については2月24日のエントリ参照)。この証言は、他の伝聞証言を全て吹き飛ばすほどの力を持っています。これを考慮に入れてもなお、控訴審でも同じような判決が下されるのなら、もはやこの国の司法は腐りきっていると嘆くしかありません。
この宮平氏の証言は、座間味島に調査に訪れた藤岡信勝氏らと偶然に出会った宮平氏がその場で語ったものです。産経新聞が2月に報じ、その後宮平氏は沖縄県庁で記者会見も開きましたが、今をもって沖縄の二大メディアである沖縄タイムスと琉球新報では報じられていません。両紙の記者は会見場に来ていたそうですが、一切記事にはされませんでした。彼らは、宮平証言に対し完全無視を決め込んでいます。
軍命を真っ向から否定しているのだから、本来なら「こんな酷いウソを言っている元防衛隊員がいる」と大きく報じて反論してもいいようなものです。だけど、その気配は全くありません。なぜ無視せざるを得ないかと言えば、宮平証言の信憑性があまりに高いからでしょう。
実は両紙は、宮平氏の存在をずっと前から知っていたのです。自分たちが作り上げた虚構を揺るがす最重要人物だと分かっていたから、彼らは軍命否定論者と宮平氏が出会わないようにいろいろ画策していたのです。今回藤岡氏らが座間味を訪れた際も、沖縄タイムスの若い記者が逐一行動を監視していたとのこと。しかし、その思いも虚しく藤岡氏と宮平氏は思いがけず出会ってしまったのでした。(このあたりの記述は、WiLL5月号「沖縄戦集団自決に新証言 沖縄タイムスの『不都合な真実』藤岡信勝・鴨野守共著を参照)
サヨクメディア関係者も、本当は軍命などなかったことを知っているのです。だけど、一度ついたウソは何が何でもつき通さなければならないので、「関与」などという言葉を持ち出して必死に誤魔化しています。今回の判決も物語っているように、今や赤松・梅沢両氏が自決を命じたと胸を張って断定できる人はいません。それほどまでに、渡嘉敷・座間味両島における集団自決の軍命令説は信憑性を失っているのです。
控訴審ではバイアスのかかっていないマトモな裁判官に出会うことを期待して、この文章を締めくくりたいと思います。